佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
近日、高次脳機能障害に対する実際のリハビリ内容についてしたためています。
高次脳機能障害に対する実際のリハビリ:その1
高次脳機能障害に対するリハビリの実際:その2
高次脳機能障害に対するリハビリの実際:その3
今回は、続きとしまして、「失行症」に対するリハビリ内容について、わたしが実際に取り組んでいることを記していきたいと思います。
失行症とは?
麻痺がないにも関わらず、日常生活において、目的動作が行えなくなる高次脳機能障がいのひとつです。
脳卒中などで脳にダメージを受けることで、場面に応じた道具を選べなかったり、道具の使い方自体を誤ったりします。
例えば、歯磨きをしたいのにクシを選んだり、歯磨きをしたいのに歯ブラシを髭剃りのように扱うなどの行為のエラーを認めます。
失行症の背景には、体の空間的な使い方の誤り・動作の記憶・体に注意を向ける・動きをイメージすることなどに問題を抱えていることが多いです。
臨床で実際に行っている内容
動詞に合うカードを選ぶ
「みる」「食べる」「つまむ」「書く」などの動詞の意味を聞いて理解しても、実際の動きと動詞の意味を合わせることができない失行症がある方に対して、上のような写真を使っています。
わたしが動詞を言い、患者さんが動詞に合う写真を選びます。
失行症になると、相手の動きを観察することが難しくなるので、観察するときに相手の動きを詳しく観察する練習にもなります。
動作の順番にカードを並べる
失行症の中でも、系列動作がわかりにくくなる方がいらっしゃいます。
系列動作とは、ある一連の動作のことで、例えば髭剃りを順序よく行う一連の動作を指します。
系列動作が行えなくなる方に対して、上記の写真を動作の順番通りに並び替えてもらうなどします。
髭剃りであれば、以下のような順番になりますね。
(左から順番に並べています)
ジェスチャーの意味を言ったり選んだりする
相手の動きを見て、どのような意味を持つのかわかりにくくなる方がいらっしゃいます。
そのような場合、写真を複数提示して、ジェスチャーの意味をわたしが言い、患者さんに該当する写真を選んでいただくようなリハビリを行います。
例えば、「お静かに」や「内緒」の意味を持つ写真を選んでいただきます。
また、写真を見てジェスチャーの意味を言っていただくなども行います。
指の形を真似する・選ぶ
失行症になると、感覚に問題がなくても、指の形がどのようになっているのか見ないとわからないという症状が出る場合があります。
患者さんの左手を机の下やタオルの下に隠して、わたしが患者さんの手で写真のような形を作ります。
患者さんは自分自身の左手の形がどのようになっているか考えて、同じ形の手の写真を選んだり、右の手で左手と同じような形を作っていただいたりします。
最後に
今回は、わたしが臨床で行っている失行症がある方へのリハビリ内容について記しました。
ひとつひとつのリハビリ内容については、背景やメカニズムがありますので、いっぺんに解説すると一回のブログが長くなりすぎてわかりにくくなるので、後日詳細な解説が出来ればいいなと思っています。
何かリハビリのヒントになれば幸いです。
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年11月15日のブログより転載させていただきました。