介護の本を読もうと思って買いためた5冊のうち、最後の本になります。
排泄・入浴・食事のいわゆる三大介護について、この「新しい介護学」シリーズで学んできましたが、この食事に関する本が一番インパクトがありました。
一番の驚きは、
「刻み食は介護食として相応しくない」
ということでした。
それは、食べるときの3つの段階で考えると分かると言います。
(1)咀嚼――噛むこと
(2)食塊形成――口の中で一回分の大きさにまとめるという動作
(3)嚥下――飲み込むこと
この三つの段階を経て、人は食べることになります。
だいたい介護施設では、入れ歯が合っていないとか、かむ力が弱い、嚥下が弱いなどといった場合に、刻み食や流動食にしてしまいます。
ただ、原因も考えずにやってしまってはいけないのです。
むやみに刻むと何が起こるか。
刻んだものが歯に挟まり、かえって食べにくくなったり、食べ物をまとめることが出来なくて、飲み込みにくくなったりと、まったくの逆効果になってしまうというのです。
極端な例を言えば、きなこをそのまま食べると私たちでもむせこみますが、嚥下の弱いお年寄りにとっては、刻み食がそのような状況ということだと思います。
では、どうすればよいのか。
答えは、(1)咀嚼の問題に関しては、「食べものを柔らかくする」こと「食べ物を押しつぶすこと」。
(2)職階形成の問題に関しては、刻むこととは逆に「食べ物を固める」こと「一口大の大きさにまとめる」ことだそうです。
とろみをつけるのも有効とのこと。
(1)の「押しつぶす」、(2)「食べ物を固める」というのは衝撃でした。
僕自身、介護施設時代はめちゃめちゃ刻んでいました。
しかし、押しつぶした方が、食感が残る感じがして美味しそうです。
また、食べ物を固めるべきだというのは、通常と逆の発想のように感じられます。
ただ、食塊形成という観点で言うと、これは必要なことなんですね。
きなこで言うなら、きなこ棒をかみ砕いて柔らかくしたような状態でしょうか。
(3)嚥下では、食べ物と飲み物で対応する方法が異なるといいます。
食べ物では「とろみをつける」こと「大きさを一定にする」こと、飲み物では「とろみをつける」こと「ゼリー状にする」ことだそうです。
ちなみに、ゼリーはゼラチンが一番だそうです。
18度から表面上が解け始めるので、飲み込みがしやすくなるそうです。
また、タンパク質で出来ているので、栄養面もばっちり。
一番重度の人は、ゼラチンで固めたものがいいそうですが、
本書では、うなぎを一度ペースト状にしたうえで、
さらにもう一回うなぎの形に固め直し、
見た目もおいしく一口大に食べられるといった工夫も載っています。
多くのお年寄りは、「食べられない」のではなく「食べたくない」のではないか。
それを解決するためには、自分が食べても美味しいと思えるような食事を工夫すること。
それが本書の大事なメッセージだと思います。
僕自身、これからいろいろゼラチンなど使って、自分がおいしいと思えるようなものを試作してみたいと思いました。