佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中発症直後、点滴治療やリハビリが開始してから間も無く、自分一人だけの時間に麻痺手をどのようにしたらいいかわからないことがあったのではないでしょうか。
病院によっては、担当看護師やリハビリスタッフが寝たり起きたりするときの麻痺側の手足の置き場所の指導があったり、動かし方を教えてもらったりした方もいらっしゃるでしょう。
しかし、脳卒中発症直後は、自分自身の手足がどうなっているかわからなくて自分の手足を扱うのが怖かったり、感覚障害がある場合は手足がどこにあるのかわからなくて健側で麻痺手を探せないことが多々あります。
このような時期に、おひとりで過ごしている時間帯にベッド上で寝返ったりベッドに腰掛けたりすることがあった方もいらっしゃると思いますが、麻痺側の手足の扱いに慣れていない時は寝返り時に麻痺手を体に巻き込んだりして、肩を痛めることもあるのです。
実際に、感覚障害があったり、身体失認という自分自身の手足がどこにあるかわからなくなる症状があったり、病態失認という自分の体の状況が認識出来にくくなると、病棟でおひとりで過ごしている時などに、麻痺手を体に巻き込んだり下敷きにしてしまうことがあります。
私は、脳卒中後の麻痺手の管理について、麻痺側の足の管理より難しい印象を持っています。
私見ですが、私は麻痺手の管理で以下のことが大切だと思っています。
① 麻痺側の肩が脱臼しないようにポジショニング調整や起居動作を行う
これは患者さんだけが頑張ることではなく、医療スタッフ側もともに行なっていただきます。
寝返り起き上がりのとき、麻痺手が動かない場合に麻痺手を腹部に引き寄せたりしておかなければ、体は起き上がる方向に動いても、麻痺側の腕が背中側に取り残されてしまうことがあります。
患者さんには麻痺手を忘れないように寝返り起き上がりをするように指導しますが、周りの医療スタッフも同様に患者さんが麻痺手を忘れないように声かけしたり介助していくのです。
② 車椅子や椅子に座っているとき、太ももの上にバスタオルやクッションを置き、その上に麻痺手を置く。
https://ameblo.jp/aoi19780728/entry-12781256411.html
車椅子や椅子に座っているとき、麻痺側の腕が動きにくく筋緊張が低い場合、麻痺手をだらんとした状態で座ると肩を脱臼する可能性があります。
三角巾やアームスリングを使って肩を保護する方法もありますが、バスタオルなどの上に麻痺手を置いても肩の負担が減ります。
③ 車椅子の乗り移りやトイレなどで立つ動作の時、麻痺手がだらんと落ちる場合はアームスリングを使ったりポケットに麻痺手を入れる
車椅子や椅子に座っているときの麻痺手の位置については上記の②に記しましたが、車椅子の乗り移りやトイレでの立ち上がりなどで麻痺手がだらんと垂れ下がっても、麻痺側の肩を痛めてしまうことがあります。
特に車椅子への乗り移りでは、体に回転方向の力が発生しますので、麻痺手が垂れ下がりやすい場合は麻痺側の肩に強い遠心力がかかるので肩を痛める可能性があります。
アームスリングなどを用いれば肩の安全性が高くなりますが、ベッドに寝ているときアームスリングを使っていない方が急にトイレに行きたくなったときはアームスリングをつける時間的余裕がないかも知れません。
そのような時は、麻痺手をポケットなどに入れて、麻痺手が垂れ下がらないように気をつけていただいています。
④ 麻痺手を日常生活で参加できるような取り組みを実行する
麻痺手を日常生活に参加させることは、麻痺手の回復に有効です。
また、少しずつ成功体験を積み上げることでさらに麻痺手を日常生活で使う頻度や質が上がるなどの好影響を与えます。
日常生活で麻痺手を使うことは、麻痺手を忘れずに意識づけるきっかけになると思っています。
今回あげた内容以外にも、麻痺手を管理する上で大切なことがあるかと思います。
私は毎日の臨床で、患者さんとしっかり話しながら、麻痺手の管理に寄与できる作業療法士でありたいと思っています。
引用・参考
1) 北村 新 他:脳卒中片麻痺者が生活のなかで 麻痺手の使用・不使用にいたる過程.作業療法 38巻1号 2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/38/1/38_45/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2024年3月18日のブログより転載させていただきました。