佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
先日、「ものをつかむまでの一連の動き」について写真を用いながらまとめました。
ものをつかむまでの一連の動き
脳卒中後の方々のリハビリを行うとき、指の動きは良いけれども、肩と肘が動きにくいという症状の方を担当することがあります。
また、逆に、肩と肘の動きは良くても、なかなか手指の動きが難しい方もいらっしゃいます。
今回は、前回の内容を補填する意味で、さらに物をつかむまでの動きを分けて考えてみたいと思います。
ものをつかむまでの動きは3つに分けられる
ものをつかむまでの動きは、3つに分けられます。
① 到達
② 接近
③ 把持
この中に、「操作」までを入れると、上肢機能全体をとらえたことになります。
① 到達
到達は、リーチ動作として名を聞いたことがあるかもしれません。
到達は、つかむものに対して手を伸ばしていく動作で、主に肩や肘の関節運動を伴います。
目的に手をのばしていくとき、つかむものが自分の体からみて、「どの方向にあるのか」「距離はどれぐらいか」を見積もって、手を伸ばしていきます。
手をのばしていくときは、一番の近道(最短距離・直線的)で、到達できるように肩や肘が協調して働きます。
「バンザイ」はスムーズに行えるのに、ものに手をなかなか伸ばしにくい方では、肩が動くときに肘が伸びにくい方が多い印象です。
また、小脳梗塞などによって、運動失調症がある場合、目的地まで最短距離で手を伸ばさずに、左右に揺れながら到達する方もいらっしゃいます。
② 接近
接近は、アプローチとも呼ばれ、つかむものに対して、手のひらを向けたり、手指の指腹を向けたりする機能です。
手のひらや手指の指腹をつかむのものに向けるためには、ものの形や大きさやつかもうとする部分の傾きなどを判断できる必要があります。
その判断に基づいて、どのように手のひらをものに合わせていくか、手指の指腹をものに合わせていくかを動きのプログラムとして脳内でつくられていきます。
③ 把持
把持は、実際にものに手指や手のひらが触れた状態で、テーブルなどからものを持ち上げたり、包み込むように握ったりする動作です。
手指の形をつかむものに合わせながら、指先でものの滑り具合などを確かめ、力のいれ具合を調整しながら持ち上げたりします。
ものをつかんで持ち上げるときは、手指や手首や肘などからものの重心の位置を感じ取り、把持力を変化させたり、指同士の位置や力の釣り合いを考慮しながら持ち上げの動作を行います。
把持にはさまざまな種類があり、脳卒中後の麻痺の手の状態を把握するために、麻痺手で行える把持の種類を確かめることが多いです。
最後に
今回は、ものをつかむまでの動きを分けて記しました。
物をつかむまでの動きを知ると、ご自身の動きのどの場面がどんな状態かわかりやすくなると思います。
お役に立てれば幸いです。
引用・参考
1) 楠 貴光 他:上肢のリーチ動作の評価と運動療法.関西理学 18: 39–46, 2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/18/0/18_18-B02/_pdf/-char/ja
2) 植北 祥充 他:人間の把持機能の実験的考察.計算自動制御学会.1996
https://www.topic.ad.jp/sice/htdocs/papers/161/161-11.pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年12月24日のブログより転載させていただきました。