佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後、急性期病院や回復期リハビリテーション病棟にいらっしゃるとき、「退院時に歩けるようになるのは難しい」「歩行自立は難しいけど、誰かと一緒なら短距離歩けるかもしれない」と言われたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。
「脳卒中になってから日にちがそんなに経っていないのに、なんでそんなことがわかるのだろう」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
病気やケガをした直後やある時期の状態から、患者さんの将来を予測するという「予後予測」という考えがあります。
予後予測は、生命予後・機能予後・社会的予後があり、リハビリでは機能予後についての研究が多いような気がします。
脳卒中後、退院時に歩けるかどうかという予測を立てることは機能予後にあたりますね。
リハビリに関連する予後予測は、非常に多くの研究がなされており、新しい内容に置いていかれないように必死に勉強しています。
そのような予後予測の情報をもとに脳卒中発症直後のお体の状態や2週間後・3ヶ月後などのお体の状態から、将来の歩行の状態を予測して、「退院時に歩けるようになるのは難しい」「歩行自立は難しいけど、誰かと一緒なら短距離歩けるかもしれない」と説明したのだと思います。
先行研究では、脳卒中後1週間のバランス能力(体幹制御機能)と麻痺側の股関節を伸ばす力が6週間または12週間までに自立して歩行できるか予測する最も重要な因子であると報告されています。
この先行研究を用いて患者さんの予後予測を用いると、脳卒中後1週間の時点でバランス能力低下を認めていたり股関節を伸ばすことが困難であれば、6週間または12週間までに自立した歩行能力を獲得することが難しいと予測できることとなります。
また、回復期リハビリテーション病棟に入院してから3ヶ月以内の歩行自立を予測するためには、バランス機能・寝返り起き上がりなどの起居動作の自立度・認知機能低下の有無が予測因子として選択されたという報告もあります。
さらに、回復期リハビリテーション病棟での歩行自立までの期間予測についても、下肢の麻痺の程度と日常生活動作の状態から日数を予測する計算式(重回帰式)も報告されてます。
いずれも、精度が高くとても臨床としては貴重な研究報告だと思っています。
しかし、わたしが長年外来リハビリで担当させていただいてる方は、脳卒中発症後に歩くことができないだろうと言われていたけれども、歩行自立状態で通院されている方々がいらっしゃいます。
歩行の予後予測はあくまでも予測で、おひとりおひとりの状態に合わせてリハビリ支援を行い、可能性を見いだしていくような関わりを持ちたいと思っています。
引用・参考
1) Simith MC , et al.:The TWIST Algorithm Predicts Time to Walking Independently After Strok.Neurorehabil Neural Repair . 2017 Oct-Nov;31(10-11):955-964.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29090654/
2) 吉松 竜貴 他:回復期脳卒中患者の歩行自立予測.理学療法科学 33(1):145–150,2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/1/33_145/_pdf/-char/ja
3) 林 真範 他:回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者の歩行自立までの期間.理学療法学 第46巻第3号 188~195(2019年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/46/3/46_11427/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年8月19日のブログより転載させていただきました。