佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後のリハビリテーション支援の中で、まだまだ未発達だなと思う分野は数多くありますが、そのなかの1つに「高次脳機能障がいを有する方の就労」があると思っています。
医療保険管轄のリハビリテーションは、180日前に病院を退院し、外来リハビリで継続して支援することもありますが、多くの場合は自宅退院が目標のであることも多く、自宅退院後の支援を病院で勤務しているわたしが行うことは希な状況です。
脳卒中後、高次脳機能障がいのリハビリテーションを行い、自宅退院に結びついた方を多く経験してきましたが、就労年齢の方で、復職・就職には結びつい方はわずかです。
高次の機能障がいを有する方の就労のあり方について、今一度勉強しようと思い、当事者の声を中心に集めた報告を読もうと思いました。
今回は、インターネットで公開されている報告書を中心に学んだことをまとめていきたいと思います。
就労継続に至るまでのプロセス:当事者視点
就労している高次脳機能障がいを有する方へのインタビューをまとめた報告があります。
インタビュー内容を分析して、脳卒中後に就労継続に至るまでのプロセスにおいて7つの大カテゴリーが生成されていました。
■ 発症前と変わっていないという自負
■ 発症前との変化による精神的負担
■ 受け入れてくれた存在の大きさ
■ 障害に配慮のない会社への苛立ち
■ 提供されたサービスへの不信感
■ 会社の意向が変わらないことの諦め
■ 障害と付き合いながらする仕事
この報告での考察では、「障害に配慮がない会社への苛立ち」を抱くプロセスに、2つの理由があると述べています。
■ 高次脳機能障がいは目に見えない障がいであり、社会参加の場で障がいを正しく認識されにくい
■ 障がいを認識されても、可能な作業と困難な作業は正しく認識されていない
この2点について、作業療法士の視点から考えても、就労支援の大切なポイントであると感じました。
報告でも、当事者視点の支援に向けた提案がなされており、会社による疲労の蓄積などの身体面の配慮や当事者自身による代償手段を活用した適切な対処の必要性を述べています。
作業療法士のわたしに何ができるかを考えると、
✔ 就労先への高次脳機能障がいに関する知識・援助技術の学びの場の支援
✔ 高次脳機能障がいの状況と仕事内容のマッチング
✔ 当事者に対する代償的手段の活用方法の指導・援助
が挙げられると感じました。
これから、脳卒中後の方で高次脳機能障がいを有し、リハビリテーションで改善しても症状が残る場合の方への就労支援を行う可能性は高いと思います。
そのような対象者に出会ってからの学びも大切ですが、事前に学べることをたくさん吸収しておきたいと思っています。
引用・参考
1) 江口みのり 他:脳卒中後の高次脳機能障害者が就労継続に至るまでのプロセス.作業療法の実践と科学 1(2):23_x0005_31,2019
治疗实践与科学1(2):23-31,2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/psot/1/2/1_23/_pdf/-char/ja
2) 浦上裕子 山本正浩:高次脳機能障害者の就労にむけたリハビリテーション ─発症から 1 年後の介入について.高次脳機能研究 第 35 巻第 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/35/1/35_9/_pdf/-char/ja
3) 石元美智子 他:高次脳機能障害をもつ当事者の視点からみた社会適応.令和元年度 高知リハビリテーション専門職大学紀要 第1巻
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kochirehadai/1/0/1_9/_pdf/-char/ja
4) 田谷勝夫:日本の高次脳機能障害者に対する職業リハビリテーションの取り組み.高次脳機能研究 31(2): 151 ~ 156,2011
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/31/2/31_151/_pdf/-char/ja
5) 松田妙子 他:脳外傷者の職場定着要因分析.職 業 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ンVOL.20 No.2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsvr1987/20/2/20_2_2/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年1月13日のブログより転載させていただきました。