佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
脳卒中後、急に起こった出来事として気持ちがついていくことが難しかったり、手足の動きにくさを自覚して落ち込んだり、周囲の心ない言葉に気持ちが不安定になったりとさまざまな心の変化があらわれたと思います。
心が落ちつくまもなく、脳卒中後の急性期管理が終了するとリハビリテーションが開始されます。
この時期は、リハビリを頑張りたいと思っていても、気持ちがついて行かず、周囲から「やる気がない人」「モチベーションが低い人」と勘違いされてしまった経験がある方がいらっしゃるでしょう。
脳卒中発症後から間もない方と出会うたび、「今のお気持ちは大丈夫かな」と考えながら接しています。
医療者側から一方的に「やる気がない方」とレッテルを貼られていた方と出会うことも度々です。
脳卒中後のリハビリを行うにあたって、患者さんのお気持ちを考えるために、モチベーションの知識は重要だと思っています。
今回は、再度モチベーションについて記していきたいと思います。
モチベーションの状態別の報告
脳卒中後、モチベーションが高い方・低い方に分けて面接した内容を分析している調査報告があります(引用・参考の1)。
モチベーションが高い方は、ご自身が努力することで心身の機能が回復すると考えており、モチベーションが低い方は回復は待たないといけないと考えていらっしゃる方が多いようでした。
また、モチベーションが高い方は、リハビリスタッフの指示した方法のリハビリが大切であると考えており、モチベーションが低い方はリハビリスタッフのリハビリの考え方が理解できていないと答えていました。
さらに、モチベーションが低い方々は、家で生活できるか不安をお持ちで、さまざまな情報を求めていました。
そして、モチベーションが低い方々は、ご自身の気持ちをスタッフに伝えることに対して恐怖感を持ち、否定されるかも知れないと感じていました。
モチベーションに関するさまざまな論文をまとめて分析したものの報告
引用・参考の2では、過去の論文からさまざまなことを調べています。
この報告にて脳卒中後の患者さんのモチベーションに影響を与える要因は以下のものが挙げられていました。
✔ 対象者の個人の特性
✔ 家族の存在
✔ 文化的背景
✔ 物的環境
✔ 個人的な目標の有無
✔ 励ましの有無
✔ 社会的な支援
✔ 日常生活にもたらされる利益
✔ 訓練から逃れたという気持ち
✔ 目標の維持
✔ 回復に対する信念
✔ 医療者の態度
✔ 訓練の心理的・身体的利益
モチベーションと医療スタッフとの関係を考える
今回は2つの引用・参考文献を用いて、モチベーションについて記しました。
毎日の臨床場面で患者さんから伺っていることや当事者会やSNSなどでお寄せいただいた皆さんからのご意見と、2つの文献とで一致している内容があると思いました。
□ ご自身の気持ちをスタッフに伝えることに対して恐怖感を持ち、否定されるかも知れないと感じていること
□ 医療者の態度
脳卒中後、ご自身の体の状態や今後の目標でモチベーションが変わるだけではなく、医療者との関わりのあり方がモチベーションを左右していることがわかりました。
医療者との関わりについては、当事者会やSNSでご意見や体験についてお話を伺うことがよくあります。
モチベーションの状態は、リハビリを行うにあたって、患者さん自体が主体的に行動していくか否かに大きく影響を与えるものです。
患者さんご自身の状態だけではなく、医療者のあり方自体もモチベーションに影響を与えるという事実をしっかり頭に入れながら、毎日のリハビリ支援を行っていきたいと思っています。
引用・参考
1) N. Qualitative analysis of stroke patients’ motivation for rehabilitation. BMJ. 2000 Oct 28;321(7268):1051-4
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC27512/pdf/1051.pdf
2) 吉田 太樹 他:脳卒中患者のリハビリテーションへのモチベーションに関するシステマティックレビュー.作業療法 39巻4号 2020年8月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/39/4/39_468/_pdf/-char/ja
☆*:.。.最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんのブログ「脳卒中リハビリよろづ相談所」2022年9月3日のブログより転載させていただきました。