佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
脳卒中後、歩行中に転倒した経験があられる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
また、歩いているとき以外にも転倒した方もいらっしゃると思います。
遠藤ら(1997)は、複数転倒している方はすべて同じ動作での転倒だったと報告しており、どんな場所やどんな動作のときに転倒しやすいか知っておくことが転倒予防につながると思っています。
今回は、脳卒中後の転倒について記していきたいと思います。
どんな場所で転倒するのか
入院している脳卒中後の方々の転倒は、さまざまな場所で起こっています。
遠藤らの調査では、転倒した場所は、
✔️ リハビリ室
✔️ 病室
✔️ 廊下
✔️ トイレ
であったと報告しています。
リハビリ室での転倒は1割で、その他は病室や廊下などの病棟での転倒が多いという結果でした。
どんな動作のときに転倒するのか
遠藤らの調査では、転倒したときの動作は、
✔️ 歩いているとき
✔️ 座ろうとしたとき
✔️ 立ちあがろうとしたとき
✔️ 車椅子とベッドやトイレに乗り移ろうとしたとき
✔️ 座っているとき
であったと報告しています。
転倒したときに行っていた動作は、座っているとき以外は姿勢が変わったり、重心が変化したりするなど動きに大きな変化が起きるときだったとわかります。
身体能力での差
転倒は、歩行が自立している方には起きないと思いがちですが、歩行自立者も転倒の危険性があります。
高嶺(2005)は、転倒した方のADL状況を調べ、車椅子使用者、歩行介助レベル、自立歩行レベル問わず転倒の報告があったと記しています。
興味深いのは、転倒件数で、介助歩行レベルの方より自立歩行レベルの方の転倒件数が多かったという結果です。
歩行が介助レベルの方が転倒する場合、一人で歩いてしまって転倒するということが想像できます。
また、自立歩行であっても、さまざまなきっかけ(不注意、予期せぬ出来事、慌てている時など)で転倒する可能性があることを把握しておかなければならないと感じました。
転倒の要因
転倒の要因については多くの報告が確認できます。
ニ瓶らの転倒要因のツリーダイアグラムでは、脳卒中以外にも他の疾患が入っていますが、転倒に関するさまざまな要因を一覧することができます。
出典:転倒の内的要因分析に基づく転倒頻度予測手法の提案
上記のツリーダイアグラムで示された転倒の要因には、
①疾病・障害
②感覚要因
③運動要因
④高次脳機能要因
⑤行動要因
⑥心理要因
などが網羅され、転倒の主要因を
✔️ 障害物の回避能力
✔️ バランス能力
✔️ 行動の頻度
✔️ 失神
と掲げています。
この結果をみると、転倒は何かひとつの要因でなく、さまざまな要因が絡んでいることがわかります。
最後に
転倒を起こさないことは安全に生活する上で大切ですが、転倒による二次的なもの(骨折など)を予防する上でも大切です。
ご自身のお体の状態にあった移動手段や動作方法を行って過ごすことが大切です。
このブログが転倒予防にお役に立てれば幸いです。
引用・参考
1) 遠藤 恵 他:入院脳卒中片麻痺患者の転倒実態と関連要因に関する研究.群馬保健学紀要.1997
https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/1680/1/KJ00004426511.pdf
2) 高嶺 一雄:脳血管障害患者における転倒・転落の危険因子.kitakanto med J 2005
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kmj/55/1/55_1_1/_pdf/-char/ja
3) 二瓶 美里 他:転倒の内的要因分析に基づく転倒頻度予測手法の提案. 日本転倒予防学会誌 Vol.3 No.1:3-12 2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tentouyobou/3/1/3_3/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました.。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんのブログ「脳卒中リハビリよろづ相談所」2022年9月13日のブログより転載させていただきました。