佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
当院は、比較的ご高齢の方々の脳卒中後の入院が多いのですが、入院患者さんの1割に満たない割合で就労世代の脳卒中後の方が入院してこられます。
しっかり統計を取っているわけではありませんが、当院に入院してこられる就労世代の方々の重症度が軽度であるため、70%~80%方が復職に至っています。
脳卒中の身体的な症状が軽度であっても、高次脳機能霜害が後遺症として残っている場合は、就労が難しい印象です。
脳卒中後の就労は、数多くの報告や論文など公開されていますが、引用・参考の1)のシンポジウムの総説では、「わが国における脳卒中罹患労働者の復職率は 30~50%であり、予測される機能回復に見合った数字には至っていない」と記されています。
このような状況を受け、労働者健康安全機構では、平成26年度から両立支援コーディネーターの養成を開始し、介入に同意した方々を支援する中で70%近い復職率が得られていると報告されています。
政府がすすめる「働き方改革」において「病気と治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の促進」がうたわれていますが、急性期病院や回復期リハビリテーション病棟の役割として、主に就労支援を行っている病院・施設が少ないのが現状です。
脳卒中後、体の動きや高次脳機能の面のリハビリ、日常生活動作が自立・もしくは何らかの支援によって実行できるようにリハビリテーション内容を組み立て、できるだけお住まいの地域やご自宅に退院できるように日々葛藤しています。
実際にわたしが脳卒中後の方々を担当させていただいてリハビリ支援を行うとき、体の動きを最大限に回復するようなリハビリ計画を立て、高次脳機能障害があれば高次脳機能障害に関するリハビリ内容を組み立て、セルフケアがご自身で行えることに力を注いでいます。
脳卒中後、ご自宅への退院を目指すとき、本人・ご家族の方々からは、「まずトイレが自立できるように」というお気持ちをいただきます。
その他として、「家の中で歩けるように」「身の回りのことが自分でできるように」というご希望をいただきます。
脳卒中後のリハビリ支援の中で、急性期から回復期の時期では、「まずは退院」というお気持ちがメインになると思います。
自宅への退院が可能であると判断できるとき、またはさまざまな支援を受けながら自宅で生活することが可能であるとわかったころ、就労世代の方々への就労に関するお気持ちをしっかり傾聴しなければならないと思っています。
当院では、入院中に就労に関するリハビリができなかった場合(ご自宅への退院がメインの目標であるときなど)、ご自宅に退院したあと、外来にて就労に必要なリハビリテーション支援を行っています。
お体の動きの支援・高次脳機能障害への支援・セルフケアの支援とともに、就労に関する支援もしっかり行っていきたいと思っています。
引用・参考
1)豊田 章宏:脳卒中後の治療と職業生活の両立支援.脳卒中 42: 37–42, 2020
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/42/1/42_10690/_pdf/-char/ja
脳卒中の職業復帰―予後予測の観点から―.Jpn J Rehabil Med 2018;55:858-864
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/55/10/55_55.858/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年3月22日のブログより転載させていただきました。