佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後のリハビリの方法にはさまざまなものがありますが、入院中に「塗り絵」を行ったり、取り組んでいる方を見かけたりすることがあったのではないでしょうか。
わたしも、臨床現場で塗り絵を脳卒中後の方々の麻痺手のリハビリに用いることがありますし、麻痺手の反対の手で実施していただくこともあります。
脳卒中後のリハビリの方法はざまざまですので、患者さんの状態や目標やお気持ちに沿ってリハビリ内容を考えていくとき、「塗り絵」が必要だと判断したときに、塗り絵を実施しています。
今回は、リハビリの視点から塗り絵について記していきたいと思います。
塗り絵について
塗り絵は、比較的どこでも導入しやすい作業活動の1つで、下絵の枠内に色を塗る活動です。
用いる道具は、色鉛筆・クレヨン・マーカーなど多種多様にわたります。
どのような下絵の塗り絵を塗るのかによって、難易度調整が可能で、子供から高齢者まで幅広い年齢の方に提供できます。
塗り絵の下絵による難易度は以下のようなものが挙げられます。
✔ 用いる色の数
✔ 下絵の塗る枠の大きさ
✔ 下絵の線の太さ
リハビリの視点から塗り絵を考える
塗りを行うとき、さまざまな脳の部位が働くことがわかっています。
① 塗り絵の下絵の全体をみる(後頭葉・頭頂連合野・側頭連合野など)
・下絵の空間的な配置を知る
・どのような絵が描かれているかを知る
② どのような順番や色で塗るか考えていく(前頭連合野や頭頂連合野や側頭連合野など)
・過去の記憶や知識などから色を選択する
・できあがりなどを想像しながら塗る順番の計画を立てる
③ 実際に色を塗る(運動野・小脳・感覚野など)
・色塗りの運動の命令を出す
・動きの調整や修正を行う
脳卒中後、脳のダメージの部位によっては働きにくい場所があると思いますが、塗り絵を行うことは脳全体の活動が必要であることがわかります。
また、塗り絵の精神的な影響についても先行研究があります。
文献3)では、塗り絵を行った後「緊張・不安」「抑うつ・落ち込み」「怒り・敵意」「活気」「疲労」「混乱」の項目で値が低下したと報告しています。
身体活動としての塗り絵は、座位時間の延長・手指の巧緻性の改善などが期待できます。
最後に
今回は、リハビリの視点から塗り絵について記しました。
比較的、どの病院や施設、ご自宅などで導入しやすい活動だと思っています。
慣れ親しんでいる活動を改めて深掘りすると、新たな学びがあるなと感じました。
これからも、臨床に必要な学びを続けていきたいと思います。
引用・参考 1)上島 健 他:ぬり絵作品における制作順序に関する考察.Journal of Osaka Kawasaki Rehabilitation University Vol.5. 2011
2)石川 隆志:作業の魅力・作業の力.作業療法 40:5~11,2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/40/1/40_5/_pdf/-char/ja
3)埜﨑 都代子 他:作業療法の効果:「ぬり絵」の「内田クレペリン精神検査」との対比による検討.昭和学士会誌 2014
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/74/4/74_413/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年3月9日のブログより転載させていただきました。