佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
脳卒中後に出現する高次脳機能障がいのひとつに、「遂行機能障がい」があります。
遂行機能とは、自分自身の行動を計画して、その計画に則って実行したり、実行通りに行かないときに問題解決の方法を新たに考え行動計画を立て直したりする一連の機能です。
脳卒中や交通外傷などにより、脳の前の部分の前頭葉(特に前頭前野)にダメージを受けると、遂行機能障がいが出現する可能性があります。
遂行機能障がいは、周囲から「自分で行動しにくくなった」「パニックになりやすい」などの症状が見えて気がつかれることもあります。
これまでも、高次脳機能障がいについてさまざまな内容を記してきましたが、今回は「遂行機能障がい」についてまとめていきたいと思います。
遂行機能とは
遂行機能は、日常生活動作や社会生活を営むために必要な能力で、さまざまな場面で必要です。
Lezak(1995)は、遂行機能について以下の4段階に分けています。
① 目標の設定
② 計画の立案
③ 目標に向かって計画を実際に行う
④ 効果的に行動を行う
例えば、トイレに行きたくなってトイレに行こうと思ったとき、すでに誰かがトイレを使っているとしたら、皆さんはどのように行動するでしょうか。
✔ 別のトイレがある場所では、他の場所のトイレに向かう
✔ トイレを我慢できる状況であれば、先にトイレを使っている人がトイレから出てくるまで待つ
✔ トイレを我慢できないような切迫感があるとき、トイレを待っている人がいることをトイレの中の人に知らせるためにノックをする
トイレに行きたいときの行動として、すぐにトイレが使えるときもあれば、使えないときもありますね。
一旦立てた行動の計画(トイレに行くこと)が問題なく実行できるときは、計画通りにことをすすめます。
しかし、一旦立てた計画通りに行動ができない場合(誰かがトイレに入っている場合)は、別の行動計画を立てる必要があり(別のトイレに行くなど)、別の行動を実行する必要があります。
行動の計画を立てるときは、そのときの自分自身の状況や周囲の状況(周囲の人の状況や環境)に応じた計画を立てる必要があります。
この遂行機能が脳のダメージによって障がいを受けると、「遂行機能障がい」として症状が出現する可能性があります。
遂行機能障がいについて
遂行機能障がいでみられる症状には以下のようなものが挙げられます。
✔ 目的を達成するために相応しい新しい行動を取り入れることができない
✔ 自分が行っていることをモニタリングできない
✔ 自分自身の行動を修正できない
✔ 実行できそうな内容を選ぶことができない
✔ 行動をシフトできない
✔ リスクを冒す・ルールを守ることができない
このような症状が出ることで、日常生活や社会生活に支障をきたします。
例えば、今まで使うことができていたスマートフォンが使えなくなったり、転倒する可能性があるときリスク管理が出来ずに一人で歩いてしまうことが見られます。
最後に
今回は高次脳機能障がいのひとつである「遂行機能障がい」について記しました。
次回は、遂行機能障がいに関するリハビリについてまとめていきたいと思います。
引用・参考
1)種村 純:遂行機能の臨床.高次脳機能研究 第 28 巻第 3 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/28/3/28_3_312/_pdf/-char/ja
2) 原 寛美:遂行機能障害とその認知リハビリテーション治療.Jpn J Rehabil Med 2020;57:629-637
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/57/7/57_57.629/_pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年9月28日のブログより転載させていただきました。