佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
先日、高次脳機能障害に対するリハビリの実際:その1をアップしました。
高次脳機能障害に対する実際のリハビリ:その1
上記のブログでは、「社会的行動障害」「記憶障害」に対するリハビリの実際についてしたためました。
今回は、遂行機能障害と注意障害に対するリハビリの実際について記していこうと思います。
遂行機能障害
遂行機能障害とは、日常生活のことから仕事などにいたるさまざまなことがらに対して、計画的に実行することが困難になる症状が生じます。
遂行機能障害には、記憶障害や注意障害が併発していることも多く、「なぜ患者さんが計画的に行動することができないのか」について背景にある課題について分析していきます。
遂行機能障害のリハビリテーションとして、
① 障害に対する気づきや病識などのメタ認知能力による改善が有効な方略である
② 障害の自己モニタリングや自己教示法、障害の自覚を促すことが最も推奨される
③ 問題解決訓練
などが挙げられています。
実際のリハビリテーションの現場では、患者さんの行動障がいを把握し、どのようになることを目指すのか患者さんと話し合います。
例えば、車いすの乗り移りについて順番を覚えることができずに、危ない状態でも一人で行動してしまう方々に対して、
□ 車いすの乗り移りについて写真や文字で説明し、どの部分を誤っているのか確認する
□ 車いすの乗り移りの瞬間に、順番を言葉に出して1つずつ実行する
□ 車いすの乗り移りの様子を録画して、患者さんと一緒に動画を見ながら確認する
などの方法を行っています。
実際の車いすの乗り移りの場面で、医療スタッフが声をかけながら行っていた方法を見守りへ少しずつ切り替えていき、自律を促します。
注意障害
注意障害とは、集中力が落ちたり、注意散漫になり物事が進まなくなる症状が生じます。
ひとくちに注意障害と言っても、
① 集中力が長続きしない
② 必要なものごとに注意を向けられない
③ 必要な物事に注意を切り替えられない
④ 同時に複数のことを実行できない
などの注意障害の分類に分けられます。
注意障害の分類のうち、1つのみの症状が出ていることもありますし、複数の症状が重なっていることもあります。
この注意障害や記憶障害などが重なって、上記の遂行機能障害が出現することがあります。
実際のリハビリテーションの現場では、
□ 静かな環境で課題に取り組む
□ 簡単なものから複雑なもの、1つのものから2個以上のものを処理する課題に取り組む
□ 短い時間から長い時間行えるように課題の支援を行う
などを行って行きます。
具体的には、麻痺が軽度であるけれども注意障害のうちの「注意散漫」「集中力が持続しない」ために、病棟内歩行が見守りレベルとなっている方々に対して、
□ 歩くときに自分の歩きに集中することを伝える
□ 周囲の状況(廊下にある車いすや他の患者さんが歩いているときなど)に気を配りつつも、危険を回避しながら自分の歩きに集中力を戻すこと
□ 上記2点を病室からリハビリ室までの歩行の間に集中し続けること
などを行い、歩行自律へ導きます。
最後に
高次脳機能障害に対するリハビリは、おひとりおひとりの背景をしっかり分析し、対応を計画していくことが重要です。
脳卒中後、性格が変わってしまったと考えるのではなく、脳卒中後の高次脳機能障害による行動の変化ではないのかという支援でリハビリテーションを行っています。
これからも、しっかり症状を見極め、おひとりおひとりにあった支援を行っていきたいと思います。
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年11月8日のブログより転載させていただきました。