佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
病院ではうまく使うことができていた車いす操作が、ご自宅に退院後はうまく使えなかったということを教えてくださる当事者の方々がいらっしゃいます。
さまざまな体験談を教えてくださるので、入院患者さんへの退院支援に関してとても役に立っています。
いろいろ皆さんから教えていただきますので感謝しています。
車いす操作に関して、ご自宅に退院した後と入院中と大きく異なるのは、環境の変化です。
病院では、段差がなく、廊下の幅もひろく、床にコンセントのコードが渡っていることは少ないでしょう。
しかしご自宅では、棚や道具などがあって車いすが通る幅が確保してあっても、病院より狭いことが多いのではないでしょうか。
また、テーブルの下やキッチンの床にカーペットなどが敷いてあるご自宅もあると思います。
このようなに病院とご自宅では環境が異なりますので、自宅退院後は車いすが使いにくいなと思う方が多いのだと思います。
今回は、厚生労働省がまとめた「福祉用具ヒヤリハット事例集」より引用させていただいて、ご自宅で起こる危険性のある車いす事故の参考要因について記していきたいと思います。
また、車いす事故の参考要因として、事例集以外にも想定される要因も記していきます。
車いすに座った状態で床のものを拾おうとして前方に転落しそうになる
車いすに座った状態で、テレビのリモコンや新聞など床に落ちたものを拾おうとして、前方に前のめりになり転倒しそうになるケースです。
フットレストに足を載せたまま手を床にのばすと、フットレストに載せた足に体重がかかりすぎて、車いすごと前方に回転してしまいます。
このようなヒヤリハットの参考要因は、
①フットレストから足を床に下ろすのを忘れていた
②ブレーキをかけていなかった
③床にものを落として慌てていた
などが挙げられていました。
フットレストに足を載せたまま立ち上がろうとして車いすごと転倒しそうになった
麻痺側の足をフットレストに載せていることを忘れて、トイレなどで立ち上がろうとしたときに、車いすごと前のめりになって転倒しそうになるケースです。
普段は気をつけていても、トイレなどで慌てている状況のときは、麻痺側の足をフットレストに載せたまま立ち上がろうとしてしまう方もいらっしゃいます。
このようなヒヤリハットの参考要因は、
①フットレストから麻痺側の足を床に下ろすのを忘れていた
②トイレにいこうとして慌てていた
などが挙げられていました。
ベッドと車いすとの乗り移りのときに車いすが動いて転倒しそうになる
ベッドと車いすの乗り移りのときに、ブレーキをかけることを忘れていて、転倒につながる事故はよく報告されています。
また、ブレーキをしっかりかけていても、ブレーキの効きが悪くなっていたり、タイヤの空気圧の低下やタイヤの摩耗などが原因でブレーキがかかっていない状況と同じようなことが起こります。
このようなヒヤリハットの参考要因は、
①ブレーキがかかっていなかった
②ブレーキが壊れていた
③タイヤの空気圧や摩耗などでブレーキがかかりにくかった
などが挙げられています。
自宅内での車いす自走時に、建具枠や家具などにぶつかってケガをしてしまう
病院から退院するときに、車いすで自走する可能性がある廊下などの通り道について、事前に有効幅などを測ってから車いすに関する自宅退院指導することが多いです。
しかし、車いすで自走する想定をしていなかったドアの通り抜けや、車いす走行は可能な有効幅であったとしても建具枠に近づきすぎた車いす自走の場合、車いすのハンドリムを扱う腕をぶつけてしまうことがあります。
このようなヒヤリハットの参考要因は、
①ドアの幅員が狭い
②間口の通り抜けの際に建具枠に近づき過ぎてしまう
などが挙げられていました。
最後に
自宅退院後、ご自宅で車いすを使うときに起こりやすいヒヤリハットについて記しました。
厚生労働省が発刊している「福祉用具ヒヤリハット事例集」には、その他の福祉用具のヒヤリハットについても記されています。
参考にしていただければ幸いです。
▼福祉用具ヒヤリハット事例集2019,厚生労働省老健局高齢者支援課
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000620595.pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年12月8日のブログより転載させていただきました。