佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後のリハビリテーションにおいて、目標を決めることはとても大切な過程のひとつです。
おひとりおひとり脳卒中の症状が異なるように、リハビリテーションの目標も異なります。
「リハビリをはじめていきますが、目標をどのように決めましょうか?」と担当リハビリスタッフから質問されて戸惑った方がいらっしゃるかもしれません。
脳卒中になったばかりに、これからどうなるかわからなくて不安でいっぱいの時期に「目標はなんですか?」とたずねられてもよくわからないのが現状ではないでしょうか。
脳卒中後のリハビリテーションだけではなく、その他の病気や障害に対するリハビリテーションでも目標を定めてリハビリテーションをすすめます。
「脳卒中後のリハビリは、とりあえずこんな内容をやっていきましょう!」という立ち位置では、何に対してどのようにリハビリを頑張ればよいかわかりませんし、ただただ時間が過ぎていくばかりです。
リハビリテーションがはじまると、まずどのような状態であるのか、どんな症状があるのか検査を行います。
その後、おひとりおひとりに合わせた目標について患者さんを中心としたチームで設定します。
「脳卒中後のリハビリテーションの目標は自分自身で決める」
このように宣言とびっくりするかも知れませんが、自分の目標は自分で決めることが大切なのです。
目標の設定の方法はさまざまな考え方がありますが、患者さん本人が自分自身の「やりたいこと」「大切にしたいこと」を大切に医療スタッフとチームを組むような体制でしてリハビリテーション内容を決めて行く方法があります。
この方法では、「自分の目標は自分で!」という気持ちを大切にしたリハビリテーションの目標を決定することができます。患者さんを中心にしたリハビリテーション支援を行うための方法である「共有意思決定支援(Shared Decision Making:SDM)」のプロセスを踏むことで、「自分の目標は自分で!」というお気持ちを大切にした目標設定が実現します。
医療スタッフとチームを組むような体制でリハビリテーション内容を決定する共有意思決定支援は、「医療者と対象者の2人以上が関わること」、「双方が情報を(共有すること)、「双方が積極的に意思決定に参加すること」、「最終決定には一方だけではなく双方が合意すること」が条件であるとCharlesらは述べています。
共同意思決定支援の方法でさまざまなことを決めて行くことで、患者さん自体が医療に積極的に参加する機会をつくり、患者さんの満足度が高まりQOLや治療成績の向上などが期待できます。
リハビリテーションの目標を決めて行くとき、患者さんと医療スタッフと積極的に意見を交換し、最終的に目標を決定するときには患者さんと医療スタッフともに納得して意見を合意していく共同意思決定では、自分の目標をしっかり医療スタッフに伝えていくことが重要です。
「なんて答えたらいいのかわからない…」「こんな目標があるんだけど、リハビリさんに言うとダメかな?」などちゅうちょせずに、どんどんご自身の目標に対するお気持ちを伝えていくという考えです。
もし、ご自身で目標を見いだせないときは、そのお気持ちを医療スタッフに伝えてほしいのです。
「自分の目標は自分で発信して、リハビリテーションの目標設定を決める話し合いなどで積極的に参加する」
そのお気持ちがリハビリに対する意欲が高まり、より効果的なリハビリ内容の実施につながると思っています。
引用・参考
1) 上岡 裕美子:目標設定と目標達成度評価の考え方. 理学療法学 第49巻第3号 258~262頁(2022年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/49/3/49_49-3kikaku_Kamioka_Yumiko/_pdf/-char/ja
2) 臼田 滋:脳卒中における機能的予後予測に基づく目標設定の考え方. 理学療法学 第49巻第4号 327~335頁(2022年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/49/4/49_49-4kikaku_Usuda_Shigeru/_pdf/-char/ja
3) 秋葉 周 他:急性期脳卒中患者に対し、ガイドラインを用いたShared decision makingに焦点を当てた上肢機能アプローチを実施した一例.作業療法 41:106-112, 2022
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/41/1/41_106/_pdf/-char/ja
4) 会田 薫子 監修:今日から実践!SDMおたすけノート.中外製薬
https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/contents/cc/059/doc/sdm.pdf?viewas=3
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年8月26日のブログより転載させていただきました。