佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後、自宅に退院してから自主トレを行おうと思ったとき、病前から運動の習慣があられる方は「脳卒中になる前の運動の量と同じでいいのかな?」と迷われたことがあったのではないでしょうか。
また、退院前に自主トレの運動量や負荷量について指導を受けていても、「もう少し強めの運動をしても良いのかな?」と思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
脳卒中は、発症に関する基礎疾患があることが多く、高血圧症や心臓疾患をもっている方が大多数だと思います。
病前から運動習慣があっても高血圧などの基礎疾患に配慮したトレーニングではなかったかもしれません。
今回は、脳卒中発症前の病前の運動と脳卒中後の運動とで気をつけなければならないことについて記していきたいと思います。
健常者での運動の考え方
若年層やスポーツ選手などでは、全身持久性の向上を目的として運動を行います。
米国のスポーツ医学協会は、この運動の考え方(運動処方)について以下のような勧告を行っています。
① 身体活動の様式として、一般には、大筋群を使用する身体活動、ある程度の時間延長にも持続可能な身体活動を選ぶ
②トレーニング強度を最高心拍数65~90%、または最大酸素摂取量の50~85%に相当する
③運動時間を、連続または非連続性の有酸素性運動15~60分とする。トレーニング時間は運動強度に依存しており、低い運動強度であ長い時間をかけるように行う。
④トレーニング頻度は週3~5回
⑤トレーニングの進行度としては、トレーニング開始後6~8週間後に最も有意得られる
米国のスポーツ医学協会の運動処方は、中高年者にも適応することができますが、運動負荷やリスクを十分に考慮することが必要です。
✔ 高齢者では運動をし始めたとき、毎分の心拍数が120~130以上にならないように注意する
✔ 安全な運動から行う(転倒リスクの軽減)
脳卒中後の運動の考え方
過去の論文によると、ベッドに寝ている時間が1日のうちの約47%を占め、平均歩行時間は0.65時間であったと報告しています。
この報告では、脳卒中後の歩行の能力が回復しても、日常の活動量は少なかったとのことです。
脳卒中後、自宅退院してから活動量が少なくなることで、体力低下につながることが懸念されています。
脳卒中後も自宅退院後は、おひとりおひとりの体の状況に合わせて運動を行うことが体力低下予防につながりますし、脳卒中再発予防に影響を与えます。
脳卒中後の運動は、上記の健常者での運動の考え方では、高リスクとなる場合があります。
脳卒中は、高血圧や心臓の病気などが原因で発病することが多いため、脳卒中再発予防を意識した運動実施が求められます。
入院時のリハビリ処方では、運動時の心拍数150回未満・収縮期血圧200mmHgまでなどのバイタル変化の基準を医師が設けて対応します。
自宅退院後、自主トレとして運動を行う場合も、医師より運動時のバイタル上限を確認しておくことが大切です。
また、バランス機能や歩行の安定性も、おひとりおひとりことなりますので、転倒リスクなどの事故防止を意識して運動を行うことが重要です。
最後に
今回は、病前と脳卒中後の運動とで気をつけなければならないことについて記しました。
安全に効果的に運動をすることができればいいなと思っています。
引用・参考
1) 黒木 裕士:健常者への運動処方と片麻痺患者に対する運動療法.健康人間学 第9号 1997
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/49550
2) 永井公規 他:脳卒中片麻痺患者の廃用性筋萎縮に関連する因子の検討.2019 年度研究助成報告書
https://www.japanpt.or.jp/activity/grant/ptresearch/19-B33.pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年8月24日のブログより転載させていただきました。