佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後、手足の麻痺が出現し、立ったり座ったりする動きや歩くことが難しくなる方が多いと思います。
まっすぐ歩いているときは比較的リズムよく歩けても、歩きはじめがスムーズに動き始められなかったり、方向を変えることが難しいことがあります。
歩くことに関して、関節の動きや筋力が大切なのはもちろんですが、歩くこと自体に命令を出す神経のメカニズムも大切です。
脳卒中後は、脳のダメージによって、手足が動きにくくなる運動麻痺だけではなく、歩きに関わる神経のメカニズムにもダメージをきたす場合があります。
歩きに関わる神経のメカニズムは複雑でわかりにくい面がありますが、わたしは患者さんに説明するとき3つに分けています。
その3つの分け方を以下に記します。
比較的、スタンダードな考え方だと思っています。
① 歩行開始と停止
② 平な道を歩く
③ 障害物を避けたり砂利道を歩くなどの応用的な歩き
歩行開始と停止
歩き始めは、じっと動かない状態から歩き始めたり、座っていたところから立って歩き始めたりするときの動きです。
歩行停止は、歩いていてスピードを徐々に落として完全にストップするまでの一連の動きです。
例えば、買い物しながら歩いていて、目的の商品があるところで立ち止まるといった動きです。
脳の中の「中脳歩行誘発野」と呼ばれる場所が歩き始めを制御し、「脚橋被蓋核(PPN)」と呼ばれる場所が歩行の停止の制御に関わります。
平ら道を歩く
特段に平な道を意識せずに歩いているときの動きです。
リズムよく足が交互に動き、手も自然に軽く振っているような状態です。
いったん歩きはじめると、半自動的に歩くことができます。
意識せずに歩くことができたるための神経系の働きはさまざまな場所が関わります。
大脳皮質や脳の深部だけではなく、脊髄も関わります。
応用的な歩き
まっすぐ平な道を歩いているとき、真向かいから自転車を漕いでいる方が通り過ぎようとしたときに、避けるように歩く場所やスピードを調整するような場合の動きです。
また、水たまりを避けたり跨いだり、人混みで人を避けながら歩いたり、ちょっと小走りしたり普段履かないヒール靴を履いて歩いているような場合も該当します。
通常の歩きとは少し異なるような意識しなくてはならないような歩きです。
歩き方を環境や状況によって調整する脳の場所は、主に小脳が関わります。
最後に
さまざまな場所で歩いたり、歩き始めや停止に関わる脳の場所はあちこちにあります。
脳卒中後、手足の麻痺がなかったり麻痺の程度が軽度でも、歩行に関わる脳の場所がさまざまですので歩きにくさを感じることがあるかと思います。
患者さんが疑問に思ったことなどをしっかり説明できるように学び続けたいと思っています。
引用・参考
1) 川手 信行 他:脳卒中歩行障害の総論.日本義肢装具学会誌.Vol.38 No.3 2022
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年12月17日のブログより転載させていただきました。