掌握工具

道具を使いこなすということ

佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。


毎日の日常生活で、さまざまな道具を使いますね。


顔を拭くための「タオル」


歯をみがくための「歯ブラシ」


食事のときに食べ物をつまみ口に運ぶための「箸」


毎日たくさんの道具を使っています。


「道具は、身体につけたりとりはずしのできる付加物で、主として手と歯の機能を補う物とみなすことができよう」とK.P.Okaklerは述べています。


また、Oaklerは、「道具は機能的に考えた場合、取りはずしのできる前肢すなわち手の延長物であるから、道具の使用は人間の第一の生物学的な特徴であると思われる」と述べています。


出典:シンボル操作の脳内機構


上のサルは、届かないところに置かれたリンゴを熊手を使って、リンゴを引き寄せて、リンゴを取り上げている写真です。


胴体が動かないように固定されているので、手を伸ばしてもリンゴに手が届かないので、手の延長として熊手を使っています。


まさに、道具は、体の機能を補完する役割があると言うことだと思います。


道具を使うということには、


✔ 自分の身体の空間的配置がわかる


✔ 周囲の物体や環境の空間的配置がわかる


✔ 自分の身体で道具を操作して行為を行う方法がわかる


✔ 目的に応じて柔軟に自分の身体と道具を操作することができる


などの必要条件があります。


脳卒中後、特に左の頭頂葉という脳の部位にダメージを受けたとき、道具を使うことに関する障害が出現することがあります。


頭頂葉は、周囲を見た時の視覚情報と、体の感覚情報が統合される場所ですので、何かを掴んだり、何か道具をうまく使うことができるための大事な場所です。


道具を使うときの誤りはさまざまですが、以下のような道具使用の誤りパターンがあることがわかっています。


▼ 道具使用の誤りのパターン


出典:道具の使用障害におけるエラータイプ分類と関連病巣


わたしは作業療法というリハビリテーションの種類の仕事を行なっていますが、麻痺手のリハビリの支援を行うことが多いです。


麻痺手が少しずつ動くようになっていくと、バンザイやグーパーの運動だけではなく、さまざまな道具を日常生活の中で使っていく練習を行います。


✔️ 麻痺手側が利き手の場合、スプーンや箸を使って食事をする


✔️ 麻痺手側が利き手の場合、ペンや鉛筆を使う練習を行う


✔️ 麻痺手側が利き手ではない場合、皿を持ったり、フライパンを持つ練習を行う


このような視点で、道具を使いこなす練習をしていきます。


今回は、道具を使いこなすと言うことに対して、さまざまな書物に目を通しました。


脳卒中後、麻痺手が動きにくいことがあるかもしれません。


道具に対して、麻痺手で道具を握る動きや動作を促しながら、麻痺手のリハビリについてしっかり考えていたいと思っています。


引用・参考
1)上野 佳也:人間の道具使用技術系の発生について.


2)入来 篤史:ニホンザル道具使用の脳内機構.認知研究,7(3),195-201.(2000年<>月)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/7/3/7_3_195/_pdf


3)内田 謙:手の動きの文化.人 間 工学 vol.24,no,6 ('88)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/24/6/24_6_349/_pdf


4)入来 篤史:道具を使う.理研ニュース No.329 2008年<>月

https://bsi.riken.jp/jp/asset/img/about/timeline/pdf/078.pdf


5)入来 篤史:シンボル操作の脳内機構.日本学術振興会-RFTF 96L00208

https://www.jsps.go.jp/j-rftf/projectpdf/l/96l00208.pdf


6)種村 留美:作業療法士の立場から見た高次脳機能障害へのアプローチ.高次脳機能研究 第 28 巻第 3 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/28/3/28_3_284/_pdf


7)近藤 智 他:肢節運動失行にみられる運動記憶と運動プログラムの障害.理学療法科学 33(3):431–437,2018

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/3/33_431/_pdf


8) 原 麻理子 他:道具の使用障害におけるエラータイプ分類と関連病巣.高次脳機能研究 第 30 巻第 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/30/2/30_2_336/_pdf


☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆

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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年2月8日のブログより転載させていただきました。

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