佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
コロナ禍となら3年が過ぎますが、脳卒中後の方の住宅改修のためのご自宅訪問は、当院では未だストップしています。
ご家族にご自宅の写真を撮っていただいたり、前から関わりのあるケアマネジャーがいる場合はどのようなお住まいであったか情報をいただくこともあります。
ご家族には、ご本人が自宅に退院したときに心配な場所などをお伺いすることがあります。
コロナ禍で面会制限もあり、脳卒中後の体の状態を把握して、退院後の生活をイメージすることはなかなか難しいと思います。
ご本人の体の状態を踏まえた上で、住宅改修のポイントとなることを具体的にお話して、ご家族に自宅の状況をお伺いするようにしています。
今回は、コロナ禍だからこそ具体的にお伝えすべきだと思う、住宅改修のためのチェックポイントについて記していきたいと思います。
過ごしていた場所や移動距離
ご本人が自宅の中でよく過ごしていた場所や移動距離を確認します。
ご本人が使わない場所は住宅改修することはほとんどありません。
このチェックをすることは、住宅改修する可能性がある場所はどこなのか考えていくときの第一歩になると思っています。
▶自宅の中でよくいる場所はどこか
普段、自宅の中でよくいる場所はどこであるか確認します。
ダイニングテーブルの椅子に座っていることが多かったかもしれませんし、和室の畳の上であぐらをかいて座って過ごしていたかもしれません。
また、もともとベッドに寝て過ごしていたり、テレビの前にあるソファに座っていたかもしれません。
普段、自宅の中でよくいる場所は、ご本人にとって過ごしやい場所であったり、目的があってその場にいることが多いので、ご本人の生活スタイルが見えてきて、住宅改修のためのヒントになります。
▶寝室からトイレまでの距離はどれぐらいあるか
寝室からトイレでの距離を確認することは、現在の身体能力、特に歩行能力と今までの生活スタイルがマッチするかの大きな判断材料になります。
例えば、リハビリ室の手すりや壁などを伝って20mの歩行が見守りレベルで実行可能であったり、自立している場合、ご自宅の寝室からトイレまでの距離が20m以内であれば、自宅退院後はトイレにて排泄できる可能性が高くなります。
寝室からトイレまでの廊下などに手すりをつけたり、トイレ内に手すりをつけるかどうかの判断材料になります。
仮に、リハビリ室で平行棒を用いて5m程度の歩行が可能な場合、寝室からトイレまでの距離が20mあるとすれば、ご自宅に帰ってからのトイレの方法などを考えていきます。
寝室の場所をトイレの近くに変えていただいたり、歩いてトイレには行かずに車椅子を用いて移動したり、ベッド近くにポータブルトイレを置いたりなどの方法を考えていきます。
▶玄関から寝室や居室までの距離はどれぐらいあるか
玄関から寝室や居室までの距離を確認することは、通院やデイケアなどの通所サービスを利用する時の移動手段と移動に関わる住宅改修を考えていくヒントになります。
長い距離を歩くことが困難な場合、玄関から車椅子を用いて寝室まである移動できるか、車椅子が移動できる廊下幅が確保できるかなど検討を進めていくこともあります。
障壁になる可能性の箇所
過ごしていた場所や移動距離を把握した上で、現在のお体の状態や出来ること出来ないことを踏まえて、生活するにあたって障壁になる可能性がある箇所をチェックしていきます。
▶段差
ご本人が移動する動線上にどのような段差があるか確認していきます。
屋内だけではなく、玄関周りについても確認します。
上がり框(かまち)や段差や敷居などの場所と高さを把握します。
ご自宅で入浴する可能性がある場合、浴室の出入りの段差も確認します。
▶開き戸・引き戸
寝室やトイレなどの戸が開くタイプか引くタイプか確認します。
引き戸は車椅子での移動や歩行の移動で用いやすい戸です。
開き戸は、戸が開く方向に一歩後ろに下がったり、車椅子を後ろに下げる必要があります。
▶出入り口や廊下幅
車椅子を用いて移動するときは、出入り口や廊下幅を確認していきます。
コンパクトタイプの車椅子もありますが、普通型の車椅子であれば、出入り口や廊下幅は90cm以上あるか確認します。
出典:基本寸法
また、杖を用いて移動する場合は、1本杖であれば90cm以上、2本の杖を用いる場合は120cm以上の出入り口や廊下幅が通りやすいと言われています。
出典:基本寸法
最後に
今回は、住宅改修のためのチェックポイントについて記しました。
脳卒中後、安心してご自宅に退院できるようにさまざまな支援を行なっています。
コロナ禍で直接ご自宅に伺うことができませんが、住宅改修のためのチェックポイントを考慮しながらご家族やケアマネジャーなどに写真などの情報を共有していただいて退院支援を行っています。
自宅退院に向けて具体的な支援方法が明確になると、リハビリの内容も決定しやすくなると思っています。
コロナ禍でもしっかり支援できるように、在宅に向けた対応を考えて続けていきたいと思っています。
引用・参考
1) 国土交通省:基本寸法
https://www.mlit.go.jp/common/001392062.pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました.。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんのブログ「脳卒中リハビリよろづ相談所」2022年9月12日のブログより転載させていただきました。