佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後の歩行練習の中で、「またぎ動作」の練習を行った方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自宅に退院した後、必要な「またぎ動作」は、浴室での浴槽のまたぎ動作が多いと思います。
また、バリアフリー住宅でない場合は、各部屋などの出入り口にある1.5cm程度の敷居をまたぐ必要があるかもしれません。
さらに、屋外歩行では駐車場での輪止めやブロックをまたぐ機会がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
またぎ動作は、脳卒中後の歩行において、転倒しやすい動作のひとつであると言われています。
今回は、またぎ動作についてまとめていきたいと思います。
健常者のまたぎ動作
健常者の歩行では、足先が床や地面にぶつからないように、わずかに足を持ち上げて歩きます。
足先が床や地面にぶつからないことをクリアランスと呼びますが、平地歩行においてはクリアランスは1cm〜1.7cmを確保して歩きます。
健常者でのまたぎ動作では、平地歩行でのクリアランスの10倍程度の10cm〜12cmを確保してまたぐことがわかっています。
また、またぐ直前で歩幅を調整し、先にまたぐ足が障害物を超えた後、残された反対の足は目で確認できない状態で障害物を超えなくてはなりません。
過去の研究報告より、またぐ前の2歩前から、どのようにまたぐか決定されると言われています。
脳卒中後のまたぎ動作
脳卒中後のまたぎ動作では、「麻痺側足からまたぐ」「健側足からまたぐ」ことについて、コンセンサスは得られてないと言われています。
当事者からのアンケートでは、麻痺側足からまたぐ方がまたぎやすいと回答を得られたと報告されています。
しかし、麻痺側足から障害物をまたぐと、健側足が障害物をまたぐ間は、麻痺側足でしっかりバランスを取る必要があるので、体重をしっかり受け止める能力が求められます。
また、麻痺側足を障害物にぶつからない程度に挙げることが求められますが、過度に足を持ち上げる傾向にあり、麻痺側足を持ち上げる時もバランス能力が求められます。
先行研究では、またぐことができる高さには、体幹機能が関与すると報告されています。
最後に
今回はまたぎ動作について簡単にまとめました。
脳卒中後の歩行の中で、転倒しやすい環境としてはまたぐ動作場面が挙げられます。
おひとりおひとりにあったまたぎ動作を獲得するために、しっかり情報収集しながら臨床に向き合いたいと思います。
引用・参考
1) Ma C, Chen N, Mao Y, Huang D, Song R and Li L (2017) Alterations of Muscle Activation Pattern in Stroke Survivors during Obstacle Crossing. Front. Neurol. 8:70.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5334356/pdf/fneur-08-00070.pdf
2) 勝野 渉 他:脳卒中片麻痺者におけるまたぎ動作の分析. 臨床歩行分析研究会誌 Vol.5, No.1,2018
https://gait-analysis-forum.jp/archive/Vol.5%20No.1-3.pdf
3) 田中秀明 他:脳卒中片麻痺者のまたぎ動作時に重要となる要因について . 理学療法科学 28(2). 253-256 (2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/28/2/28_253/_pdf
4) 国宗 翔 他:健常高齢者および若年者の歩行中の障害物跨ぎ動作における側側の姿勢安定性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/46/1/46_11474/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2022年11月25日のブログより転載させていただきました。