佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後、手足が動きにくくなりリハビリの時間や自主トレで麻痺側の手足を動かすリハビリを頑張っていらっしゃる方が多いと思います。
リハビリスタッフとさまざまな内容のリハビリをする中で、「動かしている感じがわかりますか?」や「握っている感じがわかりますか?」など感覚に関する質問を受けて、「麻痺しているのにどうして感覚について質問されるのかな?」と疑問を持ったか方もいらっしゃるでしょう。
実は、手足が動くためには運動の命令がしっかり伝わることと同じぐらい「感覚」が大切なのです。
今回は、動くためには感覚が大切である理由について深掘りしていきたいと思います。
運動と感覚の関係
人の動きに関する研究は、昔は別々に研究されていたそうですが、今は運動と感覚は切っても切れない関係であることがわかっており、その相互作用について数多くの研究がなされています。
例えば、クシで髪の毛をとく動きを想像してみましょう。
① 目で見て確認すること
・クシが自分の体からどのくらい離れた場所にあるか
・クシの形はどのような形で縦に置いているか横に置いているか
⭐︎このような目で見た内容を頭の中で処理して、距離を見積もったり、どのよう腕を動かしたり、クシを握る手の形を決めて体に命令を送ります。
② 実際にクシを握って確認すること
・クシの柄の材質(ツルツルなど)
・クシの重さ
・手指の形がクシの柄に沿っているか
・用途に合わせて握り方を目で確認して握り直す
⭐︎ 脳から腕や手に命令を出してクシを握ろうとします。思ったより滑りやすい材質であれば滑らないように握り直す命令が脳から出されます。また、思ったよりクシが重たい場合も握る直す命令がだされます。
⭐︎実際にクシを握っているときは、手指での触った感覚や各関節の動きの感覚と目でどのように動かしているかについても脳に伝達されます。
③ 自分の体の位置関係
①と②について、立って行ったり座って行ったりすると思います。
その間、意識しなくても立っていれば足裏、座っていれば臀部に体重がかかっているという情報が脳に伝達されています。
また、体の部分部分がどのような位置関係にあるかについての情報も脳に伝えられています。
脳卒中後の手足の動き
脳卒中後、手足の運動麻痺自体がない場合でも、手足の感覚障害があると、ものを握ったり立って体重を支えたりすることが難しくなります。
ものを握ったときの力加減がわからなくなったり、手指で触った感じがわからなくなりものが手から落ちてしまうことなどが生じます。
手指などの感覚は、布地の感触やお風呂の湯の温度などの感覚を確かめるためにのみ存在しているのではなく、さまざまな運動を巧みに調整するためにも存在しています。
脳卒中後のリハビリの中で、感覚の状態に関する質問を行う理由がここにあります。
最後に
今回は、動くためには感覚が大切である理由について深掘りしてみました。
脳卒中後の動きにくさは、運動麻痺以外にもさまざまな原因があり、そのひとつに感覚障害が挙げられます。
脳卒中後のリハビリの中で、担当させていただく患者さん方にしっかり丁寧に説明しながら、リハビリ内容を組み立てていきたいと思います。
引用・参考
1) 小堀 聡:人間の知覚と運動の相互作用.
https://www.rikou.ryukoku.ac.jp/images/journal60/RJ60-04.PDF
2) 速水 達也 他:運動経験による体性感覚-運動連関機能の相違.バイオメカニズム 2008年19巻
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biomechanisms/19/0/19_47/_pdf/-char/ja
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年6月19日のブログより転載させていただきました。