佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の
橋間葵です。
脳卒中後、麻痺手を日常生活で使っていこうとするとき、どんな動作から行っていいか悩むことがないでしょうか。
どんなときにどのように手を使っていたか、意識していないとなかなか思い出すことが難しいと思います。
日常生活で麻痺手を使うと言っても、手は「持つ」「握る」「引っかく」「なでる」「つまむ」「つかむ」「ひねる」「むしる」などさざまざまな動作が可能なので、急に選ぶことは難易度が高いのです。
さまざまな手の動作がありますが、「つかむ」と「つまむ」が基本の動作です。
「つかむ」と似ている言葉として「握る」があり、これら2つには明確な定義がなく同じような意味合いで用いる場合が多いです。
つかむとは
手のひらと指の運動でつくりだされ、物品と手のひらが接触する動作が「つかみ」です。
つかむには、ボールのような形のものをつかむ「球状つかみ」、コップなどの筒状のものをつかむ「筒状つかみ」、丸いジャムの蓋を開けるときのつかみの「円盤つかみ」などがあります。
つまむとは
指先の限られた運動が「つまむ」ですが、指先が物品の形に合うように手のひら部分も動きます。
「つまむ」では、物品と接触するのは指先だけです。
そのため、「つまむ」は小さな物品を保持するときに用います。
机の上のつまようじをつまみあげる「指尖つまみ」、大豆などをしっかり指先でつまむ「指腹つまみ」、鍵を親指と人差し指で挟むようにしてつまむ「横つまみ(側面つまみ)」、ものを親指・人差し指・中指の3点でつまむ「3指つまみ」などがあります。
脳卒中後の「つかむ」と「つまむ」
脳卒中後の手指の状態を把握するために用いられるブルーンストロームステージテストには手指の状態の変化が細かく指定されています。
ブルーンストロームステージテストはステージ1~6に分けられており、ステージ3では意識的ににぎり拳ができるけれども指を伸ばすことができない状態です。
このステージ3では物品をつかむことができる場合がありますが、指を伸ばすことができないので握ったものを離すことが困難なことが多いです。
ステージ4ではにぎり拳の状態から、指を伸ばすことができる時期で、物品をつかんだり離したりすることが可能になる時期ですが、日常生活の中での実用性では、肩や肘や手首の機能によって異なります。
ステージ5では、指腹つまみや筒状つかみや球状つかみなどができる時期で、これらのうち1つでも可能であればステージ5と判断します。
この時期では、日常生活の中での「つかむ」や「つまむ」の実用性が高くなります。
脳卒中後の手指の回復段階は、上述のようなステージの内容を段階的に乗り越えていくことを支援することが多いのですが、例えばステージ3の状態からステージ5の指腹つまみの獲得を目指してステージをまたいで支援することもあります。
最後に
今回は、「にぎる・つかむ・つまむ」について簡単に記しました。
日常生活での麻痺手の使用頻度を高めるための知識の補充として活用していただけると幸いです。
引用・参考
1)油田 あゆみ:つかみ・つまみ・なやみ.リハビリテーション・エンジニアリング Vol.29 No.1 (2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/resja/29/1/29_2/_pdf/-char/ja
2)白石 英樹:手の機能を評価するとは.バイオメカニズム学会誌,Vol. 34, No. 4(2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/34/4/34_291/_pdf
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆
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この文章は、橋間葵さんブログ「脳卒中リハビリよろず屋相談所」2023年8月15日のブログより転載させていただきました。